研究概要 |
本年度においては、前年度までの実験で特徴的構造が見つかったZrCuNiAl4元合金における前駆構造の安定性に関し,組成の変化及び構造緩和及びガラス転移点以上での晶出直前までの熱処理に対する、アモルファス中の前駆的クラスターの安定性や構造について検討をおこなった。 前年度、このような前駆的な構造と力学特性の関連を考える上でわれわれのこれまでの小角散乱データとの関連を示唆する興味深いデータが兵庫県立大の山崎、東北大の横山らによって示された。これらの現象の定量的な測定とデータ解析を進めるためには、微小な揺らぎの定量性を検証する基準組織が必要となった。そこで熱力学的には不安定なアモルファス構造であるものの、20面体構造としてナノ準結晶を形成するZrPt合金も構造解析精密化のための標準比較対象として検討を進めた。前年度までの高精度異常小角・小中角散乱の実験成果により、全真空化が低バックグラウンド化、定量化に有効であることが実証できたため、透過率絶対値とビームセンタリングの解決を目的としたダイレクトビームモニタ機構を全真空試料チャンバに組み入れ、イオンチャンバーによる透過率測定の精密化との比較検討をおこなった。現状ではPD+アンプシステムによるモニタ導入は、ダイナミックレンジと取り扱いの簡便さの観点から著しいメリットはあまりないという結果になったが、更なるコンパクト化などにより将来的には実験の効率化に寄与すると考えられる。解析結果については、ZrPt系においてTEM/EDXなどでは検出できない微小な構造揺らぎが組成変化を伴っていることを上述の定量化を基礎として実験的に実証でき、さらに多元系の組成揺らぎの検証については結晶化との関係などについて解析を完了した。
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