研究概要 |
弘津グループでは、電子線構造解析手法により金属ガラスの局所構造と結晶化過程を調べ、ガラス形成能との相関を検討した。具体的には、ガラス形成能の高いZr-Ni-Al、Pd-Ni-P、Fe-Co-B-Si-Nb金属ガラスについて、ナノビーム電子回折を用いたガラス相の局所構造観察と結晶化過程の解析を行なった。いずれの金属ガラスにおいても、ガラス相から得られたナノビーム回折パターン中に中範囲規則構造の存在を示す回折斑点が観察され、初期に析出する結晶相(化合物相)のパターンとは異なる特徴を有することを、計算機シミュレーションを併用して明らかにした。また、これらの結果を基に、結晶化過程の複雑化に起因するガラス相の安定化機構を提案した。 松原グループでは、超音波振動下においてPdNiCuP金属ガラスの構造緩和挙動、結晶化挙動の解析を行い,また超音波振動誘起結晶化によって晶出する結晶形態を透過電子顕微鏡観察した構造に基づいて、マクロ構造モデルを構築し、結晶化誘起のメカニズムと金属ガラスの構造安定性のメカニズム解明した。この構造モデルは,弾性的に硬い領域が相対的に柔らかい領域で囲まれるというモデルである.このモデルの妥当性を検証するため,X線非弾性散乱実験を行い,ナノメートルオーダーの波長をもつ音速とミリメートルオーダーをもつ音速を比較したところ,前者の方が音速が大きいことを明らかにした.すなわち,巨視的音速と微視的音速が異なることを意味しており,ナノメートルスケールでの弾性不均質性を示唆するものとなる.またこのモデルに基づき,従来のアモルファス合金のガラス転移挙動をベータ緩和に基づいて検討した.
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