いくつかの共晶系2元合金を用いて系のナノサイズ化に伴うガラス形成能を調べた。ナノ粒子の性質は表面清浄度に敏感であるために、実験にあたってはナノ粒子の製作と評価とは同一の真空槽中で行い、この間表面清浄度を維持することが必要である。電子顕微鏡を用いたナノ粒子の実験においてこの条件を満たす観点から、鏡体中でナノ粒子の製作と観察を同時に行なう方法を採用した。これを実行するために、本特定領域研究経費にて電子顕微鏡用の双源蒸着ホルダーを調達した。このホルダーの外観は一般の電顕ホルダーと変わらないが試料をセットする部分に改造が施されている。則ち、このホルダーは三つのタングステンフィラメントから構成されている。外側の二つのフィラメントには蒸着しようとする金属を、また真中のフィラメントには基板となるグラファイトを予めセットする。この三つのフィラメントには外部の電源から別々に電流を流すことが可能である。実験には高分解能電子顕微鏡を用いた。合金ナノ粒子の作製はまず、双源蒸着ホルダー片方のソースから原子Aを支持基板であるグラファイト破片のエッジに蒸着し、Aのナノ粒子を作製した。この蒸着は観察下で行った。その後、もう一方のソースから原子BをAのナノ粒子上に蒸着させて、合金化に伴う構造変化をその場観察した。基板温度は室温である。合金ナノ粒子の化学組成については、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて情報を得た。また、電子照射効果を最小限にすると共に構造変化を原子レベルで実時間観察するために毎秒30フレームの時間分解能を持つ高感度TVカメラ(GATAN 622SC)を用いて、像をビデオレコーダーに取り込んだ。この実験の結果、Sn-Pb系などの共晶系2元合金においてアモルファスの形成がみとめられた。
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