研究課題
水の中でタンパク質が自発的に立体構造を形成するフォールディング過程に関して、研究した。1)擬似フォールディング過程をシミュレーションすることにより、アミノ酸配列情報からタンパク質の立体構造を予測するために、独自の粗視化エネルギー関数SimFoldの精密化を行った。物理化学的な考察に基づき従来よりも高精度のエネルギー相互作用項を書き下し、そのパラメータを、既知立体構造情報をもとに最適化する戦略を用いた。2)上記エネルギー関数と、フラグメントアセンブリ法による構造サンプリングによって、38種類のタンパク質についてのデノボ構造予測ベンチマークを行った。われわれの方法と、BakerらによるRosettaとのパフォーマンスを比較したところ、12/38タンパク質でフォールドを予測できるという意味において、両者は互角であった。3)立体構造予測研究の試行錯誤からフォールディング問題への基礎的理解を深めることを目的とした研究を行った。これまでの構造予測結果を観察してまず、FA法のパフォーマンスは、用いるエネルギー関数にロバストであるという考えに至った。これは、局所相互作用の重要性を示唆している。これをもとに、以下のようなキメラ構造予測実験をデザインした。すなわち、FA法における、局所フラグメント候補は対象とするタンパク質用のものを用いる反面、フラグメントをアセンブリする段階では配列に依存しないコンパクト化力だけを導入し、それを用いて構造サンプリングを行った。その結果、3つの小型タンパク質のすべてにおいて、このキメラ実験で、天然フォールドを見つけ出せることが分かった。これは、各部位の局所相互作用を満足させて、かつコンパクトな全体構造をとろうとすると、小型タンパク質の構造はもはやごく限られたものに規定されてしまう。4)SimFoldに全原子版のエネルギー関数を構築し、それを用いてフラグメントアセンブリ法による構造予測シミュレーションを行った。
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