機能性タンパク質の折り畳みおよび機能発現に伴う動力学に関する研究を行った。動力学に関しては、中性子非弾性散乱を用いた測定を系統的に行っている。中性子非弾性散乱を用いたタンパク質動力学研究は、世界的には重要視されているが、日本では我々のグループだけが行っている。 1.イェロープロテインのF6とK123が構造保持、光反応に重要な相互作用を担っていることを、部位特異的置換を用いて明らかにした。F6の変異体の構造安定性および光反応速度の詳細な測定から、F6の位置にはフェニル基が重要であることが示された。K123Aは、ホロタンパク質を再構成できず、K123L、 K123Eは、や静方と同様の安定性および光反応を示した。この結果は、123位には、正電荷は重要でなく、むしろ長鎖アルキル基が本質的であることを示している。これらから、F6とK123の間にはCH/π相互作用が働いていることが示唆された。この相互作用は、静電相互作用(F6E)や、疎水相互作用(F6L)では代用することができないことも明らかにした。 2.単純な規則によりアミノ酸配列における情報の重複を解消することをもくろみ、配列の単純化を行った。前年度までに全長にわたる単純化は不可能であることが示されている。野生型および同種タンパク質で保存されている残基と疎水性残基以外を単純化した変異体(sPYPIII)のキメラを用いて、部分的単純化に成功した。その結果、C末のβ構造が構造保持に重要であることが示された。 3.SNaseの水和状態を変えた試料に対する中性子非弾性散乱実験を行い、ボソンピークに影響が出ることを明瞭に示した。また、MDシミュレーションを用いて、中性子非干渉性弾性散乱に現れる非ガウス性の起源が、非調和性ではなく、動的不均一性であることを明らかにした。
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