研究課題
機能性タンパク質の典型として水溶性光受容タンパク質イェロープロテイン(PYP)および核酸分解酵素(SNase)を用いて、折り畳みおよび機能発現に伴う動力学に関する研究を行った。世界的に重要視されているタンパク質動力学に関する中性子非弾性散乱を用いた研究は、日本では我々のグループだけが行っている。1.PYP光反応中間体の溶液構造:PYPの活性光反応中間体であるM中間体の溶液構造を高角X線溶液散乱と揺らぎ解析の手法により明らかにした。発色団での光吸収の情報は、α4ヘリックス、β4とβ5のループおよびN端領域に伝播される。NMR溶液構造解析の結果は、必ずしも正確ではなく、局所的な変化を精度よく検出するが、大域的な構造変化に対してはあいまいさが残ることを示した。2.誘導折り畳みの機構:近年、天然変性タンパク質(IDP)の存在が脚光を浴びている。IDPは、生理的条件下では構造を取らず、標的との結合により折り畳まれる(誘導折り畳み)。我々は誘導折り畳みを示すSNase変異体を多種類創出した。阻害剤による誘導折りたたみの速度論的測定から、D⇔DI→FLの反応に従うものと、D⇔F→FLの反応に従うものが存在することを示した(D、F、Lは変性状態、天然状態、リガンドを表す)。前者は結合がフォールディングに先立って起きると言うモデルである。両方のメカニズムが起きうることを明確に示したのは世界で初めてである。3.動力学に対する水和効果:中性子非弾性散乱により動力学に対する水和の効果を詳細に調べた。水和の効果は、5meV以下の低エネルギー領域にのみ現れる。低温ではボソンピークと呼ばれる励起モードが現れるが、水和により、ボソンピークの位置は高エネルギー側にシフトした。この結果は、水和水による水素結合がタンパク質を硬くすることを示しており、城地らによる理論からの予測を裏付けるものである。
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