研究課題
本研究では、機能発現における蛋白質水和構造変化の追跡を目指し、X線散乱・回折実験と分子動力学計算などを通じて以下の成果を得た。(1)グルタミン酸脱水素酵素単斜晶系結晶の分解能を1.9Åまで拡張し、詳細な水和構造変化解析を可能にした。また、正方晶系での結晶構造を分解能2.9Åで決定した。正方晶系結晶の回折パターンではドメイン運動由来の散漫散乱が顕著であり、今後その解析を行う。ハプテン結合状態抗体Fvの結晶構造を1.8Åで決定し、ハプテン結合に伴う大規模構造変化を明らかにすると共に、ごく少数の水分子が構造変化を制御することを見出した。シタロン脱水酵素の変異体について、結晶構造解析とCD測定を行い、基質結合時のC末端領域構造形成メカニズムを推定した。その他にも酵素および膜蛋白質の結晶化と結晶構造解析を試みた。(2)分子動力学計算によって得られるトラジェクトリーに関して、蛋白質固定座標系を設定し、長時間平均して得られる水和構造を解析した。蛋白質周囲の水素結合形成確率と水素結合ネットワークは低温結晶構造解析で見出された水和構造の静的特徴と良い一致を示した。(3)PAS (Per/Arnt/Sim)ドメイン含有し、植物の光形態形成で主要な役割を担う光受容蛋白質Phototropin1 and 2,PhytochromeA, FKF1のフラグメントの高次構造をX線小角散乱実験によって解析した。幾つかのフラグメントにおいて光照射による大規模な構造変化を検出した。(4)高干渉性X線による蛋白質分子の時間相関関数測定を目指し、測定方法の開発を進めた。金コロイドとグルタミン酸脱水素酵素結晶の時間分割X線散乱・回折データを取得し、データ取得に悪影響を及ぼす諸機械要因を洗い出すとともに、時間相関解析のための計算コードを作成した。また、サブゼロ温度領域でのX線散乱・回折実験に向けた試料槽を試作している。(5)原子間力顕微鏡によって蛋白質の運動を直接測定する技術の開発を試みている。
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