研究課題
水溶液中におけるタンパク質やペプチドのアルコール変性現象やアミロイド線維形成は、構成しているアミノ酸の疎水性-親水性バランス(HLB)と溶媒のHLBとが相互に影響し合う結果発現する。本研究では、種々のアルコール-水混合溶液の溶媒クラスター構造変化、アルコール-水混合溶液中における合成ペプチドの二次構造変化、およびin vitro的に熱又は化学変性によりアミロイド様繊維を形成する人工蛋白質amyloidgenesin (AG)について、以下の成果を得た。1.X線回折、同位体置換中性子回折、分子動力学計算により、1-プロパノール(1-Pr)-水、トリフルオロエタノール(TFE)-水混合系およびヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)-水混合系のミクロ構造を決定した。いずれの系においても、アルコール濃度が増加するにつれて、水-水およびアルコール-水間の水素結合は強化されること、特定のアルコール組成で四面体氷類似構造からアルコールの鎖状構造への構造転移が起こること、1-Pr < TFE < HFIPの順にその効果が強くなることを明らかにした。これらの溶媒構造変化からタンパク質のアルコール変性を考察した。2.10残基のペプチドについて、水中ならびにエタノール中において、溶媒分子をあらわに取り込んだレプリカ交換分子動力学計算を行った。モデルペプチドの慣性半径および分子内水素結合の数を計算した結果、エタノール中ではモデルペプチドは極性の側鎖同士が接近したコンパクトな構造をとりやすいことが分かった。これらの結果からペプチドのアルコール変性機構を分子論的に考察した。3.AGのアミロイド線維形成過程と細胞毒性の関連を調べたところ、初期課程では毒性の上昇がみられ、その後毒性の低下が見られた。しかし、アミロイド線維を形成しないAG誘導体では毒性は見られなかった。この事から、細胞毒性はアミロイド形成時のAGの凝集様式にあると考察した。in vitroでは、AGのアペプチド鎖中に配置したMet残基が酸化されることにより、α-helix構造からβ-sheet構造へと転移しアミロイド様構造を形成するAmyloidgenesin-Met(以下AG-Met)をデザインした。
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