研究課題
タンパク質やペプチドのミスフォールディングにより生成するアミロイド線維は、酸化ストレスなどの外的因子や溶媒とペプチドの親水性一脂肪親和性バランス(HLB)の織り成す作用により、α-ヘリックスからβ-シート構造への二次構造転移が重要であると考えられる。本研究では、アミロイド線維形成機構を明らかにするために、アルコール水溶液のHLB変化によるタンパク質やペプチドの構造とダイナミクスに対する溶媒効果を調べた。また、タンパク質界面の水モデルとして、親水性界面をもつMCM-41と疎水性界面の活性炭細孔中に閉じ込めた水の熱力学性質と構造およびダイナミクスを明らかにした。さらに、酸化によりアミロイド線維を形成する人エタンパク質(amyloidgenesin)を設計して、マウス神経細胞中に導入してアミロイド線維形成やその細胞毒性を試みた。1.β-ラクトグロブリンをエタノールならびにトリフルオロエタノールと水の混合溶媒に溶解し、中性子散乱測定によりタンパク質の構造とダイナミクスに対するアルコールの効果を調べた。2.10残基のモデル小ペプチドについて、エタノール水混合溶媒中で一般化アンサンブル法(レプリカ交換)を用いた分子動力学計算ならびに二次元NMR測定により、ペプチドの二次構造に対する溶媒和の影響を調べた。ペプチド周囲の微視的な溶媒和環境の変化から、アルコール変性の機構を分子論的に明らかにした。3.室温から200KにおいてMCM-41ナノ細孔中にキャピラリー凝縮で吸着した重水のダイナミクスを中性子スピンエコー法により調べた。およそ229K付近に低密度から高密度への過冷却水のダイナミカルクロスオーバーが生じることが明らかになった。この温度は、水和したタンパク質の機能が発現し始める温度(dynamical temperature)に近く、タンパク質界面の水モデルとして有用であることが証明された。4.アミロイド様繊維形成人エタンパク質amyloidgenesin(AG)のアミロイド線維形成過程と細胞毒性の関連を調べ、その毒性は初期課程アミロイド線維のサイズに依存することを明らかにした。
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