研究概要 |
これまで我々のグループではRISM理論とKirkwood-Buff理論に基づき、溶液の部分モル容積(PMV)や部分モル圧縮率(PMC)を求める理論を開発し、水溶液中の20個のアミノ酸の部分モル容積を、ほぼ、完璧に再現すると同時に、ペプチドのヘリックスーコイル転移に基づく部分モル容積変化を定性的に求めることに成功している。本研究では文献によくあらわれる5個の蛋白質、BPTI(58残基),RNase A(124残基),Lysozime(129残基),b-Lactogloblin A(162残基),a-Chymotrypsinogen A(245残基)の部分モル容積を3次元RISMの方法により求め、実験と比較した。その結果、3次元RISM理論が蛋白質の部分モル容積を定量的に再現することがわかった。この結果は3次元RISM理論が蛋白質の水和挙動を解明する上で、信頼性の高い理論であることを示している。この結果はすでに学術雑誌(Chemical Physics Letter,395,1-6(2004))に掲載されているが、蛋白質の熱力学量を第一原理的に求め、実験結果との定量的な一致を得た最初の論文である。この論文の中で、同時に、自由エネルギーの計算も行っているが、対応する実験結果がないため、単なる予測に止まっている。しかしながら、本研究の結果は今後3次元RISMの方法を蛋白質の安定性解析、分子認識、あるいは折り畳み問題に適用して行く上で、非常に大きな自信を与えるものである。
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