研究課題/領域番号 |
15076212
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
平田 文男 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 教授 (90218785)
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研究分担者 |
鄭 誠虎 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 助手 (40390645)
今井 隆志 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (30373096)
吉田 紀生 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 特別協力研究員 (10390650)
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キーワード | RISM理論 / 3次元RISM / 蛋白質 / 部分モル体積 / 部分モル圧縮率 / 圧力効果 |
研究概要 |
本研究は分子性液体の統計力学に基づき、水溶液中における生体分子の構造安定性と化学過程を分子レベルで記述するための理論的方法論の構築を目的とする。本年度は下記の成果を得た。 (1)巨大分子の静電ポテンシャル計算の高速化 本研究では巨大分子の波動関数から静電ポテンシャルを高速計算する新しい方法を提案した。本方法では空間を溶質分子からの距離に応じて3つの領域に分割する。溶質から十分遠い領域では部分電荷を用い計算コストを節約し、近距離では溶質の波動関数から静電ポテンシャルを直に評価することで精度を保った。 (2)蛋白質の変成による部分モル容積変化 蛋白質の構造は圧力をかけると部分モル容積を小さくする方向に変化する(ル・シャテリエ則)。最近、Akasakaと彼の共同研究者によって、二つの圧力下でのリゾチームのX線構造が決定された。我々はAkasakaらによって決定されたリゾチームの構造に対する部分モル容積を3次元RISM理論によって求めた。その結果、高圧条件に対応する構造が低圧下のそれに比べて約120cc/molだけ小さな部分モル容積をもつことを明らかにし、ル・シャテリエ則を分子レベルで証明した。また、さらに詳細な解析の結果、高圧構造の部分モル容積の減少に最も大きく寄与するのは蛋白質内の空隙(水分子が入り込むことができない隙間)であることが明らかになった。 (3)蛋白質空隙内に補足された水分子を理論的に「検出」 水は蛋白質の天然構造を安定化しているだけでなく、酵素反応などの機能にも深く関わっている。蛋白質の活性部位は、通常、水で満たされており、基質の結合(認識)は必然的に水の排斥を伴う。したがって、蛋白質に対する基質の認識は水との競争関係で行われる。我々は3次元RISM理論に基づく水-蛋白質系の研究で、蛋白質内の細孔内に補足された水分子を理論的に「検出」することに初めて成功した。
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