研究概要 |
蛋白質が選択的に結合したイオンを3次元RISM理論で「検出」 蛋白質によるリガンドの認識はその機能発現機構の中で極めて本質的プロセスである。本研究では人リゾチームの野生型と各種変異型によるNa^+,K^+,Ca^<++>の選択的結合を3次元RISM理論によって「検出」した結果を報告する。 人リゾチームの野生型およびQ86D置換体はどのような正イオンも結合しないことがKuroki-YutaniのX線回折実験からすでに知られている。彼らは、同時に、A92D置換体はNa^+を結合するがCa^<++>は結合せず、Q86D/A92D置換体はCa^<++>を結合するという報告を行っている。本研究では3次元RISM理論により電解質中の人リゾチームの野生型及び数種類の置換体の水和構造、イオン分布を計算した。その結果、野生型及びQ86D置換体はイオンを結合せず、A92DとQ86D/A92Dはイオンを結合することを再現した。これらイオン結合性のある置換体のもつNa^+及びCa^<++>の選択性についても定性的に実験結果を再現した。 本研究で報告した方法は水溶液中の溶質の分子種を変えるだけで、イオンチャネル、酵素反応、ドラッグデザインなど、分子認識が関わる多くの生理過程に容易に拡張することができる。本研究はその突破口を切開くものである。 [J.Am.Chem.Soc.128,12042(2006)に既報]
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