研究概要 |
本研究の目的は,1)いわゆるGZKエネルギー領域(>10~19eV)での信頼のおける空気シャワー現象のモンテカルロ・シミュレーションの手法を開発すること,2)CERNのLHC加速器を用いてシミュレーションで用いる核相互作用モデルの妥当性を検証をすることである。 1)昨年度完成した完全モンテカルロ法と準完全モンンテカルロ法による10~19eV以上でのシミュレーション事例を蓄積し,データベース化をさらに進めた.10~20eV領域では50cpuのクラスタを使用して2週間の時間が必要であったが,アンサンブル・シンニング法を改良することにより数日のレベルで信頼のおけるデータを構築し得ることを示した.1次宇宙線として,陽子以外の原子核,ガンマ線も取り扱った.また,核相互作用模型としてdpmjet3の他に,agsjet2による事例も蓄積開始した.データ・ベースの充実とともにこれまでのディスクザイズでは不足することが懸念される状態になった.そこで1TB/台のハードディスクを用いてレイド5システムを構築し直し,3TBまで収容可能なデータベースとした.バックアップシステムは来年度増強の予定である.2月には日米韓の研究者によるワークショップを開催し,データベースの使用法の実習,データベースの各拠点への配分などを行った. 2)LHCの実験準備:CERN SPSでの最終テストを8~9月に行った.陽子(100~350Gev),電子(50~250GeV),ミュー粒子(150GeV)を用いてカロリメータの性能テストを行った.これまでのテストと異なる重要なテストとして,検出器前方10mに炭素標的を置き,350GeV陽子を照射し,2つのカロリメータで同時にガンマ線を観測した.2つのガンマ線の不変質量を求めにより,LHCでの本番実験で必要になるパイゼロ中間子のピークが実際に求められることを示した.
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