研究概要 |
獲得免疫においてT細胞は様々なサブセットを備えることにより、効率よく免疫監視機構を制御している。本年度我々は、脾臓などの末梢リンパ組織に存在する表面抗原および機能的にメモリーT細胞に類似するCD44^<hi>,CD62L^<lo>メモリー型T細胞に着目し、その起源について解析を行った。この細胞は、脾臓などの末梢リンパ組織のCD4T細胞の20〜30%を納め、サイトカイン産生能、補助シグナル依存性などシグナル伝達機能の観点から、機能型T細胞であるヘルパーT細胞やメモリーT細胞に類似した特徴を備えていた。このメモリー型T細胞は、特異的T細胞抗原レセプター(TCR)を持つトランスジェニック(Tg)マウスにおいても認められる事、そしてこのサブセットが末梢リンパ組織に出現してくるのは抗原刺激などが存在しない生後2日目からとかなり早期であることから、通常のメモリーT細胞の様にその発生過程に抗原刺激を必要としない可能性が想定された。RAG欠損のTCR Tgマウスより得た由来の骨髄細胞を、RAG欠損および正常マウス由来のレシピエントで再構築させた骨髄キメラマウスでは、正常マウス由来のレシピエントでのみメモリー型T細胞が認められたことから、このT細胞の発生過程には抗原刺激は必要でないことが裏付けられた。以上のことから、CD44^<hi>,CD62L^<lo>メモリー型T細胞は、通常のメモリーT細胞と類似した機能を持つが、その機能獲得には抗原暴露が必要無いことが明らかにされた。このことは、このメモリー型のT細胞は免疫監視機構において初期免疫反応の増幅に役立っている可能性を示唆していた。
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