研究概要 |
免疫情報の獲得と応答様式の決定の解析を目指し、T細胞が抗原認識の場である免疫シナプスの形成制御と活性化シグナルに関与する分子群のプラットフォームと考えられる脂質ラフトの機能について解析した。抗原認識と活性化に関与する分子群の時空間的動態を解明するために、標的分子を蛍光標識した正常T細胞をMHC,ICAM-1を含む脂質二重膜に落とした際の動態を全反射レーザー顕微鏡にて高感度解析を行った。T細胞レセプター、チロシンキナーゼ、アダプター分子としてCD3ξ,ZAP-70,SLP-76のGFP融合蛋白をそれぞれ、TCRトランスジェニックマウス由来のT細胞に導入して抗原特異的な認識・活性化を解析した。細胞が接触したと同時に小さなTCRミクロクラスター(MC)が形成され、このMCには、キナーゼやアダプターも共存する。活性化の指標としてのリン酸化反応がMCでのみ誘導され、細胞内カルシウム反応もMC形成と相関した。時間と共にTCR・CD3は細胞中心に集まって免疫シナプス中心を作るが、キナーゼ・アダプター分子は乖離して集積しないことが判明した。シナプス形成後も、継続的にMCは細胞辺縁部で形成され、辺縁部のみで活性化シグナルを誘導し続ける。即ち、今回発見したTCRミクロクラスターは、抗原認識とT細胞活性化のユニットであり、免疫シナプス形成の前にMCを介して活性化され、新たなMCによって活性化維持が行われていることが明らかになった。 活性化に重要なシグナル伝達分子を多く含む脂質ラフトがMCを介する活性化に重要かを、ラフト局在分子であるLATの細胞内ドメインをGFPに変換したLAT-GFPを発現するトランスジェニックマウスを作製して解析した。TCRシグナルの活性化ユニットとしてMCが形成される際に、LAT-GFPの存在するラフトはMCを形成することはないことが判明した。
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