研究概要 |
本研究においては、3次元レベルの機能的解剖学に時間軸を加味した、システミックかつ新しい観点から免疫システムの本質を追求する。炎症時新たに血中に動員される樹状細胞(Dendritic cell ; DC)前駆体は強力に免疫応答を誘導する細胞集団であり、エフェクター作用を発揮するリンパ節における遊走・機能を明らかにする目的で解析を続けている。ヘルペスウイルス(HSV-1)皮膚感染モデルにおいては骨髄系と形質細胞系という2つの亜集団(各々mDC、pDC)が迅速に動員される。mDC前駆体は炎症局所にMIP-1a/CCL3とCCR1/5を介して遊走した後、SLC/CCL21-CCR7を介して輸入リンパ管経由で所属リンパ節へ集積する。一方、pDC前駆体は炎症時の全身リンパ節へ直接、高内皮細静脈(high endothelial venules ; HEV)経由でMig/CXCL9-CXCR3を介して遊走し、かつCXCR3遺伝子欠損マウス由来のpDC前駆体はその遊走が激減する事が判明した。さらに、炎症局所で産生され血中に放出されるTNF-αが、両DC前駆体を骨髄から血中に誘導するのみならず、全身リンパ節HEVのCXCL9の発現を増強させる事によりpDC前駆体のリンパ節への血行性遊走を誘導するという、局所性と全身性の炎症がリンクしている生体防御の巧みなメカニスムがin vivoレベルで判明した。このようなDCの生体内動態解析は、Nature Immunol.5:1219,2004の総説で取り上げられるなど、世界的にもオリジナリティーが高く評価された。さらに、抗ウイルスCTL(細胞傷害性Tリンパ球)樹立の場をリンパ節と同定し、かつ、異なる経路でリンパ節に遊走した両DCの、抗CTL樹立における相互作用と機能の解析を加えている。
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