研究概要 |
細胞の極性の形成、維持には、合成された分泌蛋白や膜蛋白がTGN等で輸送小胞に分配、濃縮された後、apicalやbasolateralに運ばれる必要がある。この方向性のある輸送を極性輸送と呼ぶ。極性輸送には、低分子量GTP結合蛋白質、SNARE蛋白等が重要と考えられている。しかしこれらの蛋白の組織や個体における役割が明らかでないため、これらの蛋白を個体レベルで欠損させて検討する必要がある。そこで本研究では下記1,2の方法で極性輸送のメカニズムを解明しようと試み、既に成果を挙げている。 1.gene targeting法でこれらの欠損マウスを作製し、細胞極性の形成、維持への影響や、発生・器官形成、組織の機能への影響を解明する。 現在、rab8a, b, syntaxin3,VAMP7,MAL2,SNAP23を欠損したマウスの作製が終了し、解析まで進んでいる。更に、Annexin13,FAPP1,2,PKD1,2,Sec3についても欠損マウスを作製中である。 2.線虫(C.elegans)を用いて、細胞内小胞輸送に異常を持つ線虫の変異体の解析を行う。 現在、極性輸送に関与する新規分子を同定、解析するため、極性輸送に異常を来した線虫の変異体のスクリーニングを行っている所である。まずRutgers大学のBarth Grant博士との共同研究により,卵母細胞による卵黄タンパク質のエンドサイトーシスに異常を示すrme変異株の解析を行った。その結果、rme-3変異株がクラスリン重鎖に欠損をもつ高等真核生物において初めての温度感受性変異株であることが明らかとなった。rme-3変異株は胚性致死となり,神経系にも欠損を示すことから、電子顕微鏡を用いたシナプス末端の詳細な解析を進めている。その一方で,腸細胞における極性輸送に異常を示す変異体の分離も試みている。
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