低分子量GTP結合蛋白質ARFはオルガネラ間の蛋白質輸送を行う輸送小胞の形成を調節する。哺乳動物には6種類のアイソフォーム(ARF1-ARF6)が存在する。細胞質に不活性なGDP結合型で存在するARFはグアニンヌクレオチド交換因子(ARF-GEF)により活性を有するGTP型になるとオルガネラ膜に結合する。その部位にCOPI、AP-1、GGAなどのコート蛋白質複合体が結合して輸送小胞の形成が始まる。次に、形成された輸送小胞上のGTP型ARFにGTPase活性化蛋白質(ARF-GAP)が作用してGTPがGDPへと加水分解され、ARFとともにコート蛋白質が小胞膜から遊離する。この裸の輸送小胞が標的オルガネラ膜に融合し、蛋白質輸送が完了する。つまり、細胞内小胞輸送はARF-GEFによるARFのGTP型への変換とARF-GAPによるGDP型への変換により調節されている。 本研究者らはこれまでに、ARF-GEFのひとつであるBIG2のトランスゴルジネットワーク(TGN)とエンドソームの間の小胞輸送における役割について調べてきた。本研究では以下のことを明らかにした。 1.IG2はTGNだけでなく、リサイクリング・エンドソームにも存在することを示した。 2.BIG2のドミナントネガティブ変異体を細胞に発現させるとリサイクリング・エンドソームが管状化することを示し、BIG2が本来はリサイクリング・エンドソームでARFを活性化し、形態維持に関与する可能性を示した。 3.GGAのGATドメインを用いたアッセイ系により、BIG2は細胞内でARF1とARF3を活性化するが、ARF5やARF6を活性化しないことを証明した。
|