研究概要 |
新たに開発した高効率遺伝子ターゲティングベクター作成技術を用いてエンドソーム・リソソームの酸性化に必須なV-ATPaseのa3 isoform構造遺伝子の遺伝子破壊マウスを作成した.a3イソフォームを含むV-ATPaseは破骨細胞への分化に伴ってエンドソーム・リソソームから形質膜に局在が移行する.遺伝子破壊マウスでは,歯の形成に異常が見られ,生後3週齢になっても歯が生えてこない.また,a3 isoformに欠損をもつマウスでは,歯の形成の異常のほか,インスリンの分泌に異常が見られた.膵の抽出物中からは成熟型インスリンが見いだされること,しかし,血流中のインスリン濃度が極めて低いことから,分泌顆粒内の酸性化がインスリンの成熟化とは別に,分泌の制御に関わっていると結論した.また,エンドソームの形態維持に機能する分子,mVam2を破壊したマウスを作出した.ヘテロ接合体が外見上異常を示さない一方でホモ接合体は生まれてこず,胎性致死であることを明らかとした.ヘテロ接合体同士の交配後,妊娠マウスを用いて解析を進め,ホモ接合体は円筒型胚のステージまでは発生するが,その後の原腸陥入に欠損を示し,原条形成が行われないことを明らかにした.原腸陥入は様々なシグナル伝達系や細胞運動によって実現されるドラマティックな形態形成過程であり,オルガネラダイナミクスがどのような機構で必要とされるのかを今後明らかにしていく.
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