研究概要 |
マウスの後期エンドソームの膜動態に関与するmVam2遺伝子の機能欠損マウスを作成した.mVam2^<-/->のマウスでは胎性6.5日(dpc)から明らかに異常な形態を示し,9.5~10.5dpcには胎仔が反されてしまう.この時期のmVam2^<-/->マウス胚では,胚体を包むvisceral endoderm(VE)内に形態,内容物密度の異なる多様な小胞が蓄積し,エンドソーム・リソソーム系が異常になっている.VEのapical側からのendocytosisには異常が見られない.マウス胚では6〜6.5dpcにepiblastから中胚葉が形成され,大規模なアーキテクチャーの変換,原腸陥入が起きる.mVam2^<l->胚では,中胚葉マーカー,brachyuryの異所的な発現がみられ,中胚葉誘導の場所決定に重要なnodalの胚のposterrior側に偏った発現がみられない.胚前後軸決定に重要な因子lefty, Cer-1の発現と,5.5〜6.25dpcに起きる発現部位の前方化(apical visceral endoderm: AVEの形成)は正常に進行している.また,Hexの発現パターンから胚のproximal-distal軸も確立されている.胎仔本体に発生するepiblastを包むVEと,胚体外になるextra-embryonic ectoderm(ExE)を包むVEは形態,遺伝子発現共に異なる.mVam2^<-/->胚ではVE-epiにみられる細胞の扁平化が起きない.VEの分化はbone morphogenic proteins(BMPs)が制御していると考えられている.mVam2^<-/->胚ではBMPsにより活性化されるsmad1/5の異所的な活性化が起きており,シグナルのdown-regulationの欠損が発生異常の原因と推論した.
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