研究概要 |
エンドソーム・リソソームの構築に関与するmVam2を欠損したマウス胚では原腸陥入が正常に進まず発生初期で致死になることを見いだした.mVam2欠損変異胚はVEに多数の小胞が蓄積されると同時に,マウス胚での位置情報シグナルの一つであるBMPのシグナルが異所的に増幅されてしまうことが特徴的な表現型であった.BMPシグナルの過剰とエンドソーム・リソソームの異常の関係をさらに検討した.正常なVEは特徴的なオルガネラ,apical vacuoleを有しているがmVam2欠損変異胚ではapical vacuoleの構築ができない.Apical vacuoleは径10mmにもなる,動物細胞としては異様ともいえる巨大な細胞内コンパートメントであり,エンドサイトーシスマーカーやcathepsin Bを蓄積し,限界膜にlamp2を有することからリソソームの性質をもつと考えられる.正常胚のVEではBMP受容体はエンドサイトーシスにより細胞内に移行し,リソソームの性質をもつapical vacuoleに輸送される.しかしmVam2欠損胚ではBMP受容体が液胞化した後期エンドソーム様オルガネラに蓄積されている.この結果,BMPシグナルのVEにおけるdown-regulationができず,胚位置情報の形成が阻害されてMesの形成不全,Epiの異常が起き,発生異常を引き起こすと考えられる.mVam2欠失胚の表現型は,後期エンドサイトーシスの膜ダイナミクスが細胞間・細胞-組織間情報伝達の制御に積極的に関与すことにより,高等動物の初期発生に必須な役割を担っていることを示している.
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