研究課題
分解オルガネラであるリソソームは、細胞内外の物質を消化する主要な場である。分解の対象となる物をリソソームに運び込むために、メンブレントラフィックによる輸送ネットワークが細胞内に張り巡らされている。ネットワークは細胞外から取り込まれた分子が辿るエンドソーム系経路と、細胞自身の構成成分が運ばれるオートファジー経路からなる。本研究は、リソソームを巡る輸送ネットワークの膜ダイナミクスの分子メカニズムと細胞や組織・個体における機能的意義の解明を目指すものである。本年度は、まずオートファジーを担う膜構造であるオートファゴソームの形成機構について複数の成果を得た、1)Atg5,Atg12,Atg16Lが構成するたんぱく質複合体が、LC3とフォスファチジルエタノールアミン(PE)の共有結合反応においてユビキチン化のE3酵素のような役割を持つことが判明した。そのときATG16Lが何らかの因子を介して複合体を膜に局在化させていることもわかった。2)ある変異たんぱく質の発現により、LC3のPE化が強く阻害されると同時にオートファゴソーム前駆体である隔離膜の成長が停止することを見いだした。すなわち、LC3のPE化が膜の成長に必須であることが初めて示された。3)Beclin複合体の新たな成分を3つ同定した、成分の組み合わせにより、オートファジーに働く複合体とエンドサイトーシス経路に働く複合体の2種類が存在していた。また、エンドソーム系経路については、Tom1たんぱく質があるモーターたんぱく質に結合することとEGFの輸送に働いていることを明らかにした。
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