一般に哺乳類では、XX個体は雌としてXY個体は雄として誕生し、それぞれの生殖細胞は卵子および精子へと分化する。雌雄の生殖細胞は減数分裂やゲノミックインプリンティング(GI)を経験するが、これら2つの事象は卵子と精子で全く異なる様式で行われており不明な点は未だに多く残されている。昨年までに我々は、卵子形成過程においてGIはドナーマウスの日齢に依存することなく、卵子のサイズに依存して、遺伝子ごとに完了していくことを明らかにした。そこで本年度は、精子形成過程においてインプリントされるDlk1/Gtl2遺伝子のDNAメチル化がいつどのように確立するのかその詳細を明らかにした。 胎生期では、精細管内の全ての雄性生殖細胞が体細胞分裂期で同一の性質を持つと考えられることから、Oct4遺伝子の下流にGFP遺伝子が挿入されたTGマウスの胎仔を利用し、GFP陽性の雄性生殖細胞のみをマイクロマニピュレーターで採取した。また出生10日目以降の精細管内では減数分裂期に移行する細胞と体細胞分裂をしている幹細胞とが混在するために、レーザーマイクロダイセクションにより種々のステージの雄性生殖細胞を回収した。その後、Dlk1/Gtl遺伝子のDMRを特定しGI機構を考察するためにGtl2遺伝子上流2.6kb (IG-DMR)の全てのCGサイトについてDNAメチル化解析を行った。 解析の結果、IG-DMRの全てのCGサイトは精子特異的にメチル化され卵子ではメチル化されていないことが明らかとなった。さらに、IG-DMRは12.5日齢の始原生殖細胞で脱メチル化され、16.5日齢ころの前精原細胞で再びメチル化され始めることが示された。成熟個体の精細管内でも、精原細胞、精母細胞ともにIG-DMRがメチル化されていることから、雄性生殖細胞では雌性生殖細胞と異なり、減数分裂期以前にGIを完了することが明らかとなった。
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