研究概要 |
ゲノムインプリンティングは体細測胞系列のエピジェネティック制御機構であり、個体発生、成長、行動等に影響を与えている。今年度は、胎児期後期の成長、致死性に関係するマウス染色体12番遠位部(ヒト染色体14番q32.2)の原因遺伝子の同定を行なった。レトロトランスポゾン由来のインプリント遺伝子であるPeg11/Rt11のノックアウトマウスを解析したところ、胎盤の母子相互作用部位である胎児毛細血管の異常により、胎児期後期/新生児致死の表現型が確認された。また、Peg11/Rt11の過剰発現も同じ部位に、異なる異常を引き起こし、新生児致死を引き起こした(Sekita, et. al. Nat Genet 2008)。ヒト患者の解析から、ヒトPEG11/RTL1が染色体14番の父親性・母親性2倍体の主要原因遺伝子と同定した(Kagami and Sekita, et. al. Nat Genet 2008)。 哺乳類の3グループ(卵生の単孔類、胎生の有袋類と真獣類)のPEG10領域のゲノム解析から、PEG10が胎生哺乳類にのみに存在することを明らかにした。これは胎盤の起源にこの遺伝子が重要な寄与を果たしたことを意味している。また、有袋類におけるPEG10のインプリンティング解析から、この領域のインプリンティング制御の原因がレトロトランスポゾンの挿入であることを明らかにした(Suzuki, et. al. PLoS Genet 2007)。 体細胞クローンマウスの解析から、クローンマウスの個々に異なるエピジェネティックな異常が起きていることを報告したが、これが生殖細胞系列を通すとほとんどが元に戻ることが明らかになった(Kohda, et. al.投稿準備中)。これによりクローン動物における異常はエピジェネティックな異常によるものであることが明らかになった。
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