研究概要 |
精子幹細胞は精子形成の源にある幹細胞である。これまで、この幹細胞が増殖して、その数を増やすことができるか否かは不明であったが、我々はアルキル化剤により精子形成を阻害することで、精子幹細胞の数が実際に増加することを見いだした。同様な結果は精子幹細胞のコロニーを継代移植することによっても確認された。 さらに我々は試験管内において、Epidermal growth factor, basic fibroblast growth factor, Glial cell-derived neurotrophic factor, Leukemia inhibitory factorの添加により、胎児線維芽細胞上で培養を行い、マウス精子幹細胞を5ヶ月以上に期間にわたり増幅を行うことに成功した。増幅された幹細胞は不妊マウスの精細管内に移植することで、正常な精子・子孫を作ることができた。これまでに生殖細胞を増幅する方法としてはES細胞とEG細胞の二つが存在するが、この両者と区別するために我々はこの培養細胞にGermline stem (GS)細胞と名付けた。この方法は精子幹細胞における遺伝子操作の基盤技術となるものである。 この技術をマウス以外の種においても利用するために、ラット精子幹細胞の表面抗原の探索も行い、マウス・ラットの精子幹細胞上にCD9分子が発現していることを見いだした。これはラット精子幹細胞上の表面抗原を初めて報告したものであり、今後ラットの精子幹細胞の培養を開始するにあたり重要な技術になるものである。
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