研究概要 |
脂肪細胞はインスリン刺激により糖輸送体GLUT4含有顆粒を分泌することにより、形質膜上のGLUT4分子のコピー数を増やす。増えたGLUT4により、ブドウ糖は細胞内に吸収されるが、そのことにより血糖は降下する。GLUT4含有顆粒の輸送は刺激に応じたエキソサイトーシスにより行われるが、我々は、その分子メカニズムの解明を目標としている。培養3T3-L1脂肪細胞を用いたGLUT4のエキソサイトーシスのアッセイ系を確立した。その系でレンチウィルスを用いた発現系により、蛋白質を発現させて、解析が可能となった。海外より、Rhoファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質TC10が、小胞繋留因子exocyst複合体を介して、GLUT4のエキソサイトーシスを制御しているという報告があった。Exocyst複合体は、Sec3,Sec5,Sec6,Sec8,Sec10,Sec15,Exo70,およびExo84という8つの因子よりなる複合体であり、小胞繋留因子として機能する。我々は、このexocyst複合体をミリグラムオーダーで精製することに成功し、立体構造解析を進めている。また、我々は、TC10を用いたアフィニティ法により、TC10結合タンパク質を同定した。さらに、exocyst複合体は、低分子量GTP結合タンパク質Ralのエフェクターでもある。Ralの特異的なインヒビターを3T3L1細胞に発現させ、GLUT4のトランスロケーションを解析している。さらに、アフィニティ法によりRalに特異的に結合するタンパク質を同定し、解析している。尾野は、レンチウィルスを用いたgene trap法を3T3L1細胞の脂肪細胞への分化系と組み合わせ、脂肪細胞分化因子をいくつか同定し、脂肪細胞分化における役割を解析中である。
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