研究概要 |
内臓脂肪症候群、メタボリックシンドロームの病態基盤のひとつとして、"脂肪細胞におけるグルココルチコイド(アデイポステロイド)作用の過剰な活性化"の意義に注目し、内臓脂肪の蓄積機構、内臓脂肪の蓄積に伴うメタボリック症候群病態の分子機構の解明を進めている。平成16年度は脂肪細胞における11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1(11β-HSD1)過剰発現トランスジェニックマウス、11β-HSD1全身性ノックアウトマウスの表現型解析の成績を踏まえ、(1)脂肪細胞培養系を用いた11β-HSD1発現調節機構の検討を行なった(FEBS Lett.576:492,2004,Metabolism 53:1532,2004)。(2)ヒト11β-HSD1阻害剤〔低分子リード化合物〕の効果をin vivoで評価するために、ヒト型11β-HSD1を複数の脂肪細胞特異的遺伝子プロモーターの支配下に過剰発現させる新しいモデル動物を作成した。また、11β-HSD1に対する特異的なアンチセンスDNAのin vivo deliveryシステムを用いてモデル動物のメタボリックシンドロームに対する11β-HSD1阻害の治療的意義の検討を開始した。(3)アデイポステロイドのヒトメタボリックシンドロームにおける病態的意義を明らかにするために皮下脂肪組織バイオプシーを用いた脂肪細胞機能の評価と遺伝子発現プロファイリングを行い、肥満者における脂肪細胞機能異常について検討した(京都大学医の倫理委員会 臨床研究承認番号553番、2004年)。肥満者群皮下脂肪組織における11β-HSD1 mRNA発現濃度は対照群と比較して約6倍に上昇し、BMIやウェスト周囲径とも強い正の相関を示した。肥満者脂肪組織ではマクロファージ特異的マーカー遺伝子の発現レベルも著明に亢進しており、11β-HSD1の発現レベルと強い正の相関を示した。
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