3T3-L1培養脂肪細胞系を用いて、IL-1βやTNFαなどの種々の炎症性サイトカインが11β-HSD1遺伝子発現を著明に誘導すること、種々のPPARγアゴニストが11β-HSD1遺伝子発現を著明に抑制すること、脂肪細胞における11β-HSD1活性化がインスリン感受性ホルモン、アデイポネクチンの分泌を著明に抑制することを明らかにした。 また、ヒト型11β-HSD1遺伝子を2種類の強力な脂肪細胞特異的プロモーター、aP2とadiponectinの支配下に過剰発現させる新規の遺伝子操作トランスジェニックマウス数系統の樹立を完了し、基盤の表現型解析やコロニーの整備を進めた。11β-HSD1の機能を特異的に抑制するアンチセンスDNA配列の最適化にも成功し、経口in vivo投与にて種々の肥満・糖尿病モデルマウスの代謝パラメーターが効果的に改善されることを確認した。 肥満症例と対照健常者を対象とする皮下脂肪組織バイオプシーによって(京都大学医の、脂肪細胞機能の評価と遺伝子発現プロファイリングを実施し、肥満者皮下脂肪組織における11β-HSD1 mRNA発現濃度が対照群と比較して6倍以上に上昇していること、そのレベルがBMIや内臓脂肪面積、種々のインスリン抵抗性指標と正の相関を示すことが明らかとなり、11β-HSD1とマクロファージ関連遺伝子マーカー群との間にも強い正の相関が認められた。肥満者脂肪組織におけるアディポステロイド活性化とマクロファージ浸潤が惹起する慢性炎症との病態連関が示唆された。
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