メタボリックシンドロームにおけるレプチン抵抗性の意義を明らにする目的で種々のモデル動物に対するメラノコルチン受容体アゴニスト、アンタゴニストの中枢投与を行い、骨格筋AMPK、下流分子のacetyl CoA carboxylase(ACC)の活性化を検討した。 脳室内と皮下にカニュラを留置・馴化させ、薬剤を脳室内投与した。骨格筋AMPキナーゼの評価にはリン酸化AMPキナーゼ抗体、ACCリン酸化抗体、サムスペプチドを用いた酵素活性の測定、骨格筋中性脂質含量測定を実施した。視床下部が制御する骨格筋AMPキナーゼ活性化の経路におけるメラノコルチン系の関与を明らかにする目的で骨格筋AMPキナーゼ活性が持続的に上昇するレプチン過剰発現トランスジェニックマウスに対するメラノコルチン受容体アンタゴニスト(SHU9119)あるいはメラノコルチンアゴニスト(MT-II)の脳室内投与を行い、骨格筋AMPキナーゼ活性化を解析した。 内因性メラノコルチン拮抗物質、agouti蛋白を視床下部で異所性に高発現する遺伝性肥満KKAyマウスに対しても同様の検討を行い視床下部メラノコルチン系のどのステップが骨格筋AMPキナーゼ活性化の作用に関わるのかを検討した。 メラノコルチン受容体アゴニスト(MT-II)の脳室内投与は骨格筋AMPKおよびACCのリン酸化を顕著に亢進させた。レプチンによる骨格筋AMPKおよびACCのリン酸化の増加はメラノコルチン受容体アンタゴニスト(SHU9119)の脳室内共投与あるいはKKAyマウスにおいて明らかに減弱した。 骨格筋AMPKの活性化の減弱がレプチン抵抗性の程度とよく相関すること、メラノコルチンアゴニストは先天的、後天的に誘導されたレプチン抵抗性の状態にも効果を発揮することが明らかとなり、メタボリックシンドロームのメカニズム解明と治療法の開発に寄与することが期待される。
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