研究課題
メタボリックシンドロームの中心的病態のひとつである脂肪組織機能異常の分子メカニズムの解明に焦点を絞り、種々の遺伝子操作病態モデルマウスの解析や新規の開発、ヒト脂肪組織の解析、培養脂肪細胞を用いた解析を行った。第一点は肥満の脂肪組織における細胞内グルココルチコイド活性化酵素、11β-HSD1の制御異常の分子メカニズムの解明であり、この酵素が担う脂肪組織グルココルチコイド作用の病的過剰が脂肪細胞ホルモン、サイトカイン、ケモカインの分泌制御異常を惹起し、脂肪組織機能異常を引き起こすことが明らかとなった。本酵素が脂肪組織の炎症やセラミドシグナル、高血糖や過栄養の状態で亢進するペントースリン酸経路に関わる酵素群から供給される補因子、NADPHなど多彩な経路によって脂肪組織で活性化されること、遺伝子操作マウスや遺伝的肥満マウスで観察される調節異常がヒト肥満脂肪組織でも同様に観察されること(ヒト試料を用いた臨床研究:京都大学医の倫理委員会553、2004年より承認)、炎症脂肪組織においては脂肪細胞のみならずマクロファージにおいても本酵素が病態形成に深く関与していること、PPARγ作動薬の作用機構に本酵素の抑制が寄与していることが本研究から新規に明らかになった。第二点はメタボリックシンドローム病態における脂肪細胞ホルモン、レプチン抵抗性の意義の解明と創薬への応用であり、視床下部メラノコルチンシグナルの活性化が骨格筋脂肪酸酸化能に及ぼす効果を解析した結果、4型メラノコルチン受容体のアンタゴニストやアゴニストの脳内投与が骨格筋AMPKおよびACCのリン酸化の減弱や亢進を惹起すること、高脂肪食でレプチン抵抗性を獲得したレプチン過剰発現マウスや遺伝性肥満マウスに対する受容体アゴニスト投与がAMPK再活性化をもたらし糖脂質代謝を改善することが明らかとなった。メラノコルチンアゴニストがレプチン抵抗性を克服しメタボリックシンドローム治療に応用できる可能性を示す新規の成果である。
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