本年度は、アディポネクチンの腎障害・炎症・脂質代謝における意義を明らかにし、新規脂肪細胞由来生理活性分子候補としてURB(upregulated in bombesin receptor subtype 3 knockout mouse)を報告した。 肥満症の腎障害モデルである5/6腎摘をアディポネクチン欠損マウスに行つたところ、アルブミン尿の増加を呈した。 この現象は腎臓におけるマクロファージ集積と線維化に基づくものでありアディポネクチン補充により正常化した。アディポネクチンはアポトーシス細胞に結合してマクロファージによる除去を促進し、その障害が炎症を増強させる機序を明らかにした。またアディポネクチン血中濃度が高比重リポ蛋白と正相関する機序として、アディポネクチンがアポ蛋白A-1とABCA1発現を増加させることを報告した。この様に肥満に基づく異常にアディポネクチンの低下が関与しており、その血中濃度増加作用を有する薬剤としてフィブラートとプラバスタチンを報告した。さらに、新規分子としてURBが脂肪組織に高発現しており、アディポネクチンと向様に肥満の病態で発現が抑制されること、分泌因子であることを報告した。URBの機能解明は今後の課題であるが、新たな治療標的分子となると考えられる。 以上の成果から、脂肪細胞発現遺伝子の機能異常が肥満症と代謝異常・血管病・炎症性疾患を繋ぐ分子機構であり、その病態解明を臨床応用に向けてさらに推進させ得ると考えられる。
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