1.アディポネクチン遺伝子発現制御の研究 これまでの研究で、アディポネクチン・プロモーター領域(-2kb)を解析した結果、約-0.3kb〜-0.2kbにアディポネクチン遺伝子発現に重要な領域の存在を明らかにした。本年度では、その解析領域を-3.6kbにまで広げたところ、脂肪細胞におけるプロモーター活性が約2倍上昇し、マクロファージでもその活性がなく、その細胞選択性も強くなることが明らかとなった。さらに、この-3.6kbプロモーターを用いて、Cre遺伝子発現トランスジェニックマウスを作成し、このマウスのCre遺伝子発現が、脂肪細胞特異的であること解析した。 また、肥満脂肪組織では酸化ストレスが亢進しており、脂肪細胞におけるアディポネクチン発現低下、各種炎症性サイトカインの発現上昇は酸化ストレスにより引き起こされることを証明した。 2.肥満に伴う脂肪細胞の転写・共役因子の発現変化、そしてその脂肪細胞分化およびアデイポサイトカイン発現制御に及ぼす作用の解析 これまで行ってきた転写・共役因子の解析に加え、本年度では、さらにインスリン・シグナル分子PI3-Kinaseを抑制するphosphatase分子であるPTENの発現が、肥満脂肪組織で増加すること、また、寒冷状態では減少することを見出した。さらに、脂肪組織におけるPTENの役割を明らかにするために、脂肪組織特異的にPTENを欠損するマウスを、先述のCre遺伝子発現トランスジェニックマウスを用いて作成し表現型の解析をおこなった。 すなわち、PTENの発現制御を上流として、脂肪細胞のエネルギー代謝のホメオスタシスが制御されている可能性があり今後更なる解析を進める。
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