1.脂肪組織の酸化ストレス抑制によるアディポサイトカイン発現制御 a)ピオグリタゾンの効果とカタラー童発現制御:肥満脂肪組織での酸化ストレス産生亢進の原因として、肥満マウス脂肪組織での酸化ストレス除去系酵素の発現低下の可能性がある。チアゾリジン誘導体(TGZ)ピオグリタゾンはアディポネクチンプロモーター上のPPARγ応答領域(PPRE)を介して遺伝子発現を増強するが、今回、肥満マウスへの投与で脂肪組織での酸化ストレス除去系酵素カタラーゼの遺伝子発現・酵素活性上昇を見出した。さらにカタラーゼのプロモーターの-9kb近傍に2つのPPREが存在し、いずれもPPARγと直接結合し、転写活性に重要であるごとがわかった。以上より、TGZ誘導体にはカタラーゼによる脂肪組織由来酸化ストレス産生抑制を介するアディポネクチン産生亢進の可能性が考えられた。 b)脂肪組織特異的カタラーゼ過剰発現マウス:脂肪組織特異的とされるaP2プロモーターを利用したカタラーゼ過剰発現マウメを得て、カタラーゼによる脂肪組織酸化ストレス産生抑制を介した、肥満に伴うアディポサイトカイン異常の改善の有無を検討している。 2.一酸化窒素(NO)によるアディポネクチン発現制御:肥満マウスの脂肪組織でのNO合成酵素の発現亢進やNOによる修飾蛋白質の増加と、脂肪細胞ではNOはJNKやNFκB経路を介さずにアディポネクチンやPPARγの発現を抑制する、新たなアディポネクチン発現制御因子であることを明らかにした。 3.アディポネクチンプロモーターの脂肪組織特異性:ヒトアディポネクチンプロモーターを約-11kbまで同定し、これにCre recombinaseを繋いで、現在数ラインの脂肪組織特異的Cre発現マウスを作製した。従来のaP2プロモーターに比べて脂肪細胞特異性が高いことも確認でき、今後の脂肪組織の解析に意義深いと考える。
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