研究概要 |
1)前年に引き続いて、ニューロンとそれに付随するグリア細胞(perineuronal glia: PNG)との直接的な相互作用を検討した。実験方法は,海馬薄切片を用いて、CA1領域の法線層にある介在ニューロンとPNGから同時にホールセル記録を行うことにより行った。その結果は以下のようであった。(1)全部で181個のPNGが入力抵抗、静止膜電位およびbiocytinあるいはlucifer yellowによる細胞染色による形態から、2群に大別できる。(2)これらは、アストロサイトastrocyte(AC)とオリゴデンドロサイトoligodendrocyte(OC)の2群であることを、それぞれに特異的な免疫染色(glial fibrillary acidic proteinおよびcyclic nucleotide phosphodiesterase)で確認した。(3)ACの脱分極は、ニューロンに通電することによって起る発火パターンに抑制的な影響を与えた。(3)ニューロンを発火させると、ACに脱分極性の膜電位変化と入力抵抗の減少が起る。(4)OCの形態を細胞染色で観察すると、介在ニューロンの細胞体や樹状突起に付着する像が観察された。以上の結果から、PNGはニューロンと直接的な相互作用があると結論した。これらの結果の一部はNeuroscienceに発表した(2005,134,791-802)。 2)生理学研究所の池中一裕研究室で作成されたアレキサンダーマウス病のモデルマウスを用いてシナプス伝達効率の変化の有無を検討した。これはGFAP遺伝子に異常があり、ACにRosental fiberが出現する遺伝性疾患である。このマウスでは100Hz,10発の刺激でLTPが誘導され、これはコントロールより有意に大きかった。また2発刺激の結果から抑制がかかりにくい可能性があることを明らかにした。
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