研究課題
グリア細胞の持つ突起構造と神経細胞側の構造をスライス標本内で同時観察する試みは既にいくつか報告されているが、シナプス部位での形態変化に相関が存在するのかについては確実なデータは得られていない。このような疑問に答える為に、rhodamine-dextranを錐体細胞に導入することでシナプス後部構造の可視化を行い、一方でアストログリアの突起構造を組み換えアデノウィルスを利用してGFPを発現させる事によって検出した。更に両者が近接して存在する部位を二光子顕微鏡によりタイムラプス同時観察した。フィロボディア・スパインの中で、観察中にアストログリアとの接触を行ったもの、行わなかったものについて、その寿命を測定すると、アストログリアとの接触を持ったものが有意に長い寿命を持っていた。更にアストログリアとの接触を持つフィロボディア・スパインは、その形態をスパインへと変化させるものが有意に多かった。フィロボディア・スパインの寿命および形態学的な成熟が、アストログリアの接触と因果関係を持つことを示すため、まずアストログリアの運動性をRaclのdominant negative変異体を発現させることで慢性的に抑制した。アストログリアの運動性の低下により、フィロボディア・スパインとアストログリアの接触が低下している事を確認した。このような比較的長期のアストログリアの運動性の抑制により、フィロボディア・スパインの形態は球状の頭部を持たない、フィロボディア型のものへと変化した。Ephrin-A3/EphA4系は、海馬においてアストログリアからのスパイン形態制御シグナルとして働く事が報告されている。そこで次にEphA4/Fcおよびephrin-A3/Fcを投与して、特定の接触依存的なシグナルを急性に阻害した。EphA4/Fcおよびephrin-A3/Fcの存在下でも、接触イベントは対照群と同様に観察されたが、アストログリアとの接触を受けたフィロボディア・スパインはその寿命が特異的に短縮していた。以上の結果はアストログリアの直接的な接触が、局所的にフィロボディア・スパインの維持・成熟を制御することを示している。
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