研究概要 |
有髄神経軸索上のイオンチャネルの局在やサブタイプに対する髄鞘あるいは髄鞘形成グリアの役割を分子レベルで明らかにすることを目的として,本年度は次の3つに対して検討した. 1)グリアによる軸索上機能タンパク質の局在化および発現調節機構の検討 軸索髄鞘間に形成されるパラノーダルジャンクション(PJ)の形成不全マウスでNa^+チャネルのサブタイプに対する影響を調べた.結果,正常では発達に伴ってNav1.2からNav1.6へのサブタイプ変換が生じるのに対して、PJ形成不全マウスの中枢神経系有髄神経軸索では局在のみでなくこのサブタイプ変換が異常であった.したがってPJが軸索上のチャネルの局在やサブタイプ変換に関与していることがわかった. 2)グリアによる軸索上機能タンパク質の発現調節機構の解析 グリアの異常に伴って神経細胞での発現が変化する遺伝子を明らかにすることを目的として,PJ形成不全マウスと野生型マウスの網膜mRNAを用いてcDNAサブトラクションを行った.結果,PJ形成不全マウスで発現上昇している遺伝子34個,減少している遺伝子19個を見出した.今後これらの遺伝子の同定を行い,コードするタンパク質の機能を調べPJ形成不全が神経細胞に与える変化を解析する予定である. 3)軸索上機能タンパク質の局在化調節に関与する分子の検索 グリアの糖脂質の異常に伴うPJ形成不全マウスにおける脊髄構成タンパク質の変化をウエスタンブロットおよび2次元電気泳動法によって解析した.結果,髄鞘を構成するミエリン塩基性タンパク質の1つのサブタイプがPJ形成不全マウス脊髄で明らかに減少していた.またリン酸化タンパク質の変化が認められた.2次元電気泳動でも野生型に比較して明らかに量的変化があるスポットを4つ見出した.今後これらを同定し,機能を調べることでグリアと軸索との間の相互作用を分子レベルで明らかにする予定である.
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