研究課題
アストロサイトの多様性を、機能発現の多様性の点から検討しうるモデルマウスを作出することを試みた。アストロサイトの機能調節には、アストロサイト特異的疾患アレキサンダー病の原因遺伝子である変異glial fibrillary acidic protein(GFAP)を用いた。Cre-loxPシステムを用いたトランスジェニックマウスを作出することで、Cre組み換え酵素発現前にはEGFPを、Cre組み換え酵素発現後には変異GFAPを発現するようにデザインした。作出したトランスジェニックマウス10系統においてEGFPの発現を組織化学的に検討した結果、全てのトランスジェニックマウス系統で、EGFPの発現はアストロサイト特異的であった。使用したトランスジーンが期待通りに発現していることがわかった。アレキサンダー病では変異GFAPがアストロサイトに発現することによって、GFAPの凝集体が形成される。本年度では、脳領域ごとのアストロサイトの機能的多様性を検討する前に、まず変異GFAPの発現によってGFAPの凝集体が再現できるか検討した。作出したトランスジェニックマウスとCAG-nlsCreERマウスと交配を繰り返し、トランスジーンを3コピー有するマウスを得た。このマウスでは、GFAP mRNAの発現の高い部位である海馬、白質、嗅球、グリア境界膜でGFAP凝集体が観察された。またGFAP凝集体はユビキチン陽性、small heat shock蛋白であるHSP25およびalpha Bクリスタリン陽性であり、ヒトアレキサンダー病の病理所見を再現しているものと考えられた。以上の結果から作出したトランスジェニックマウスとCreマウスを交配させるとアレキサンダー病を再現できることがわかり、このモデルマウスの表現型解析からCre発現領域におけるアストロサイトの機能を類推できることがわかった。
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