研究課題
アストロサイト特異的疾患であるヒトアレキサンダー病モデルマウスの表現型を解析することによって、アストロサイトのin vivoにおける機能を帰納的に明らかにすることを試みた。前年度に作出することが出来たアレキサンダー病モデルマウス(変異ヒトGFAP過剰発現マウス)を用いて、凝集体発現の多い海馬を中心に、形態学的、電気生理学的、薬理学的に検討した。アレキサンダー病およびモデルマウスではアストロサイト特異的に細胞骨格蛋白が凝集するが、モデルマウスを用いた解析から、細胞骨格に著しい異常を認めるにもかかわらず、アストロサイトの微細形態が保たれていることを明らかにした。海馬スライスの電気生理学的解析では、抑制神経系の異常が示唆された。けいれん薬を用いた薬理学実験では、モデルマウスは有意にカイニン酸によるけいれんを起こしやすく、海馬錐体細胞死ひいては個体死も惹起されやすかった。モデルマウスを作出する過程で、変異ヒトGFAPの発現量が異なるラインを8ライン得た。これらのラインの解析から、変異ヒトGFAPの発現量に依存して凝集体が形成されること、凝集体が存在するラインでのみカイニン酸感受性が高まることが明らかになり、凝集体の有無がアストロサイトの機能障害の有無を規定している可能性が示唆された。アストロサイト細胞質内の凝集体の蓄積が、カイニン酸感受性亢進という神経回路網調節異常を引き起こすことがわかった。アストロサイト機能異常に端を発する神経回路網調節異常が、マウスの行動にどのような影響を与えるか調べることが出来るようになった一方で、アストロサイト内の凝集体の存在がどのような分子メカニズムで神経回路網を修飾しているのか調べることが出来る実験系を得ることが出来た。
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