研究概要 |
初年度はまず各種グリア細胞の細胞膜を凍結割断レプリカ上で同定するためのマーカーとして何が適当かということのスクリーニングを行った。これらのマーカーとイオノトロピックおよびメタボトロピック型のグルタミン酸およびGABA受容体各サブユニットの抗体を用いて、今後に多重標識を行う。またpre-embedding法で検出できるものについては、既に確立している各種グリアマーカーを用いて蛍光多重染色やHRP法と金標識による二重免疫電子顕微鏡法を行う。 また今年度は過分極により活性化されるカチオンチャネルであるIh channelのうちHCN2サブユニットが、GST-π陽性のoligodendrocyteの細胞体および突起の細胞膜上に特異的に発現していることを見出した(Notomi and Shigemoto, Journal of Comp Neurol.,2004)。これらの細胞は神経細胞体と接するように位置していることが多くperineuronal oligodendrocyteとも呼ばれているが、その機能的役割については良く分かっていない。HCN2が発現することによって膜抵抗の低下や静止電位の脱分極方向へのシフトが起こることが考えられる。HCN2はNG2陽性のoligoprogenitorやGFAP陽性のastrocyte、IbaI陽性のmicrogliaなどには全く発現していないことから、perineuronal oligodendrocyteの細胞膜マーカーとして有効と考えられる。SDS-FRL法に用いることができる膜マーカーとしては、これまでにGLASTやGLT-1などでastrocyteのP faceが強く標識できることが分かった。OligoprogenitorのマーカーとしてNG2の細胞内外のドメインの抗体、microgliaの膜マーカーとしてOx42,CD4などを今後検討していく。同時に活動依存性動態を見るために海馬歯状回における長期増強現象をin vivoで観察できる系をセットアップした。今後、テタヌス刺激による、これらの機能分子の動態を観察する予定である。
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