研究課題
本研究では、これまでに次のことを明らかにした。(1)DNA chipを用いた網羅的解析により、ATPがアストロサイトにおいて酸化ストレス緩和に関与する遺伝子群(oxidoreductase genes)の発現を上昇させる。(2)ATPは、過酸化水素(H_2O_2)誘発アストロサイト細胞死をP2Y1受容体を介して、ATPの濃度及び処置時間依存的に抑制した。(3)過酸化水素(H_2O_2)誘発アストロサイト細胞死の詳細な機序を明らかにし、P2Y1刺激によるアストロサイト保護作用がどの作用点に対するものであるかを明確にした。アストロサイトは中枢神経系で様々な働きを呈し、その制御にはATP及びUTPといったヌクレオチドが重要な役割を果たす。ATP(Koizumi et al., 2003;Zhang et al., 2003)やUTP(Lazarowski et al.1997;Homolya et.al.2000)は、様々な刺激あるいは自発的にアストロサイトから細胞外に放出される。これは、アストロサイト及び周辺細胞は、常にATP、UTP及びその代謝物の刺激に曝されていることを示唆するものである。そこで、本年度は、この恒常的なP2受容体刺激がどの様な生理的な役割を有するかを調べるために、アストロサイトのP2受容体阻害及びATP分解酵素添加の影響を検討した。その結果、アストロサイトに入力する恒常的なATPの刺激を取り除くと、金属イオン依存性蛋白質分解酵素-9(MMP-9)の産生及び放出が観察された。また、このMMP-9の産生には、サイトカインTNF-alphaの産生が関与ししていた。MMP-9は細胞外マトリックスを除去し、細胞の増殖、突起進展の際に空間を提供する非常に重要な分子であるが、一方で種々の細胞外分子を分解するために、BBB破壊等の細胞外環境破壊も引き起こす。ATPはアストロサイトのTNF-alpha産生能をtonicに抑制することにより、MMP-9産生量を調節し、脳内恒常性の維持に関与しているものと考えられる。
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