研究課題
我々はこれまでに、細胞外ATPがGタンパク質共役型ATP受容体P2Y12とイオンチャネル型受容体P2X4を介してミクログリア遊走能を亢進し、ATP刺激により活性化されたホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)シグナル系とホスホリパーゼC(PLC)シグナル系が遊走調節に関与することを明らかにしてきた。本年度は、P2Y12を介した情報伝達系の解析を進めるために、P2Y12の高親和性アゴニストであるADP刺激により活性化されるPLCシグナル系の関与についてさらに詳細な検討をおこなった。PLC阻害剤はADPによるミクログリアのラッフル形成と遊走を抑制し、また、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を阻害した。細胞内Ca^<2+>キレート剤も遊走を阻害したことから、PLC-Ca^<2+>シグナル系の活性化が遊走調節に必要であることが明らかになった。さらに、PLC阻害剤と細胞内Ca^<2+>キレート剤がPI3Kの下流で機能するAktの活性化を阻害したことから、PI3K-Aktシグナル系の活性化はPLC-Ca^<2+>シグナル系によっても制御されることが示された。そこで、ADP刺激時のミクログリアに対するAkt阻害剤の影響を調べたところ、遊走の明らかな抑制が認められた。以上の結果から、ミクログリアの遊走にはP2Y12を介したPLCとPI3Kの両シグナル系の活性化が必要であることが示され、両シグナル系の下流で機能するAktが遊走に関与することが示唆された。
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