グリア・ニューロンの相互作用を分子レベルで明らかにするために自家開発したI93M変異型ubiquitin C-terminal hydrolase L1 (UCH-L1)発現マウスを利用して神経細胞側の病態に応じたグリア側因子の変動を中脳領域で発病前、発病初期、発病後期に分けてジーンチップで解析した。I93M変異型UCH-L1発現マウスは加齢依存的に黒質ドーパミン産生細胞の脱落と線条体ドーパミン含量の低下を呈する新規パーキンソン病モデルマウスである。その結果、病理学的変化が細胞レベルで生じる以前からグルタミン合成酵素などグリアに発現する遺伝子が多数変動していることを見出した。この結果は、神経疾患の発症前において既に神経細胞側の遺伝子・蛋白質レベルでの変化がグリア細胞側に伝えられている可能性を示唆する。このグリア・ニューロンのダイナミックなクロストークの存在は神経細胞だけに特化せずグリアを含むグリアーニューロン相互作用を標的にした治療戦術の展開の必要性を示唆する。また、同定された因子の中には結晶構造の情報が利用できるものがありグリア細胞を標的にする薬剤開発も実現するためにin silico drug screening系を構築した。 上記の成果に加え、新規のオリゴデンドロサイト特異的因子としてAIGP3を同定した。AIGP3はミエリンラフトに存在する可能性が高く、細胞生物学的解析からAIGP3は発生初期のオリゴデンドロサイトから成熟オリゴデンドロサイトまで発現していることが明らかとなった。AIGP3はオリゴデンドロサイトの特異的機能に密接に関連した因子の可能性が示唆されるとともに、AIGP3がオリゴデンドロサイトの良きマーカー合子になる可能性が示された。
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