今年度はカイニン酸誘発てんかんラットを用いNa^+依存性高親和性グルタミン酸トランスポーターの機能形態学的解析を行った。Na^+依存性高親和性グルタミン酸トランスポーターは神経細胞及びアストロサイトに存在し、細胞外の過剰なグルタミン酸を細胞内に取り込む事により興奮毒性から神経細胞を保護する役割を担うと考えられている。大脳では、皮質アストロサイトにGLT-1とGLASTが発現しているが、ヒト病理組織及び疾患モデル動物を用いたこれまでの研究から発生期やてんかん脳、脳虚血、腫瘍化に伴い、その発現が多様に変化していることを発表してきた。これらの病態のうち、ヒトてんかん脳において観察されたGLT-1の細胞内局在変化に着目し、今年度はカイニン酸誘発てんかんラットを作製した。カイニン酸腹腔内投与後約2時間で観察されるけいれん重積時、GLT-1は、蛋白量は変化せず、免疫電顕でアストロサイトの細胞体や血管周囲の突起に染色性がみられたが、神経周囲に存在する腫脹したアストロサイトの突起には発現が認められなかった。すなわちGLT-1は細胞障害性浮腫の初期に内在化しグルタミン酸取り込みが低下する可能性が示唆された。グルタミン酸トランスポーターはin vitroにおいてプロテインキナーゼや成長因子存在下でサブタイプ毎に細胞内局在の調節が異なると報告されている。Membrane traffickingによるグルタミン酸取り込み調節が脳病巣でどのように制御されているか疾患モデル動物を使って次年度は検証したい。
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