研究課題/領域番号 |
15082214
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研究機関 | 国立精神・神経センター |
研究代表者 |
和田 圭司 国立精神・神経センター, 神経研究所疾病研究第四部, 部長 (70250222)
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研究分担者 |
野田 百美 九州大学, 大学院・薬学研究院, 准教授 (80127985)
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キーワード | グリア / 遺伝子 / G蛋白質共役型受容体 / PACAP / 多様性 / VIP / アストロサイト / マウス |
研究概要 |
昨年度に引き続きアストロサイトにおけるG蛋白質共役型受容体の機能解明をめざして細胞生物学的・発生工学的解析を行った。G蛋白質共役型受容体(GPCR)はゲノム上最大のファミリーを形成する。医療用薬剤の約60%はGPCRを標的にすると考えられており、創薬の重要な標的分子でもある。他方、アストロサイトに代表されるグリア細胞は、これまでの研究から、神経細胞の単なる支持細胞でなく神経細胞と積極的な物質的相互作用を行い、神経情報伝達の処理に深く関わっている細胞であることが明らかになっている。さらにアストロサイトには多様性・領域特異性が存在し、高度なグリア・ニューロン回路網を形成する要素となっていることも示されつつある。そこで、昨年マウス海馬由来培養アストロサイト、大脳皮質由来培養アストロサイト、扁桃体由来培養アストロサイトに発現するGPCR同定するために包括的定量的PCR法を適用した。その結果、各アストロサイトで発現が高まっているGPCRが同定され、そのなかの一つであるニューロテンシン2型受容体(Ntsr2)はアストロサイトに特異性が高く、Ntsr2遺伝子欠損マウスでは扁桃体機能を反映すると考えられるfear conditioning testにおいて野生型対照に比べ恐怖記憶の形成が障害されていることを見出した。今年度は、神経系前駆細胞で高発現するGPCRとしてPAC1を同定し、その活性化が引き起こす細胞作用の一つとして栄養因子存在下の神経系前駆細胞増殖をさらに増強させる活性があることを見出した。また、PAC1に近縁のVPAC2の発現が反応性刺激によりアストロサイトで上昇することを見出した。これらの結果はアストロサイトや神経系前駆細胞に高発現するGPCRがアストロサイトの増生に関わる可能性を示唆する。
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