研究概要 |
交差飽和法では、分子間距離に強く依存した双極子相互作用により相互作用部位を決定するため、従来NMR研究で行われていた化学シフト摂動法などに比較して、高い精度をもって相互作用部位を特定できるNMR測定法である。本年度は、リガンド蛋白質を膜蛋白質に対して過剰量加え、リガンド蛋白質の膜蛋白質結合状態と非結合状態間の交換系を作り出し、これに交差飽和法を適応することにより、リガンド蛋白質の膜結合界面を精度良く同定できる測定条件の検討を行なった。 バクテリアKcsAチャネルは、Streptomyces Lividance由来のpH活性を持つイオンチャネルである。チャネルポアードメインの立体構造は、X線結晶構造によりすでに明らかにきれているものの、pH依存的なゲーティング機構の詳細は不明である。また、Charybdotoxin, Agitoxin2などのチャネルブロッカーとの相互作用機構も明らかになっていない。KcsAチャネルの高効率発現系の確立およびそのインヒビター蛋白質Carybdotoxinなどの発現系の構築を行い、発現量の最適化に向けた検討を行なった。カリウムチャネルKcsAとカリウムチセネル阻害ペプチドAgitoxin2の発現には大腸菌による大量発現系をもちいた。また、NMR測定に用いるAgitoxin2は、最小培地により、15Nおよび重水素で均一標識をおこなった。これらの測定試料を用いてNMR実験を行ったところ、感度良く交差飽和現象を観測できる条件が見出せた。
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