サイトカインの一種であるケモカインは、白血球遊走活性・活性化作用を有する。これらの活性は、T細胞およびマクロファージなど免疫系細胞表面に発現しているG蛋白質共役型受容体(GPCR)を介したシグナリングにより発揮される。近年、ケモカイン受容体の一つであるCCR5が、HIV-1の標的細胞への感染時にCD4とともに共受容体として作用することが明らかとなり、CCR5とそのリガンドとの相互作用メカニズムの解明は注目を集めている。 一方、CCR5のリガンドの一つであるケモカインRANTESは、細胞表面に存在するGAG(glycosaminoclycan)と結合することによって、細胞表面付近の局所濃度が高まることが知られており、作用部位周辺で二量体あるいはそれ以上の多量体として存在することが示唆されている。しかし、これまでにRANTESがCCR5と結合する際、単量体として結合するのか、あるいは二量体として結合するのかという問題には明確な結論が得られていない。この点を明確にするためには、核磁気共鳴法などの構造生物学的手法による解析が有効であるものの、膜蛋白質・リガンド複合体に対する適切な測定法および試料調製法がなかったため、手付かずの状態であった。 そこで本研究では、(i)GPCRとそのリガンドとの相互作用を構造生物学的に解析するため、転移交差飽和法および発芽バキュロウイルスを用いた戦略を開発し、(ii)RANTES上のCCR5結合界面が、二量体分子の表面および、二量体界面の近傍にあるV49・C50により形成されていることを明らかにした。
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