膜タンパク質試料の調製法の開発:GPCRをはじめとした膜タンパク質は、可溶化によって失活するものも多く、膜に埋め込まれた状態で解析をおこなうことが望ましい。前年度までに、BVシステムがこの点に関して有効であることを示した。しかし、BVシステムなど、膜成分を試料として用いる際の問題点として、夾雑タンパク質の多さがあげられる。これにより、膜タンパク質の実効的な濃度が低くなってしまう他、非特異的な相互作用の影響も生じる。これを克服するため、京都大学藤吉教授により開発された、シナプス後膜のmGluR(代謝型グルタミン酸受容体)のクラスター化を模倣したCo-LET(co-localaized expression technique)法(Biochem. Biophys. Res. Commun. 295(2002)756-765)を用いて、CCR5、CXCR4などを昆虫細胞上でクラスター化させる試みを行った。蛍光標識等を用いてクラスター化は確認されたが、mGluRの共発現により膜タンパク質全量の発現は低下し、収量に問題点があることが判明した。 イオンチャネルにおけるゲーティング機構の解明:KcsAチャネルは外部pHに従い、チャネルの開閉を行う。チャネルの開閉はミリ秒オーダーの運動性を有することから、KcsAのNMRシグナルを解析することにより機能しているチャネルを直接的に捉え、その開閉機構を明らかにすることが可能である。特に膜貫通ヘリックスの細胞質側に存在し、X線結晶構造中において互いにスタッキングしたKcsAの2つのTrp残基に着目し、チャネルの開閉に伴う立体構造変化を鋭敏に反映するプローブとして利用することにより、開閉に伴う立体構造変化を解明した。また、KcsAチャネルの開閉を制御するpHセンサーの同定を行ったところ、His25がその候補として考えられた。
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