膜タンパク質試料の調製法の開発 : GPCRをはじめとした膜タンパク質は、可溶化によって失活するものも多く、膜に埋め込まれた状態で解析をおこなうことが望ましい。前年度までに、BVシステムがこの点に関して有効であることを示した。最終年度は、BVシステムに比較してさらに膜タンパク質の安定性に寄与すると考えられる再構成再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を取り上げ、研究を進めた。rHDLは直径約10nmの脂質二重膜の周囲を、両親媒性・-helixに富むApolipoprotein A-Iにより囲まれた構造を持つ水溶性粒子である。このrHDLを用い、脂質組成をコントロールした脂質二重膜に、膜タンパク質を埋め込め込んだところ、安定性は著しく向上し、48時間以上のNMR測定が可能となる見通しとなった。 イオンチャネルにおけるゲーティング機構の解明 : KcsAチャネルは外部pHに従い、チャネルの開閉を行う。チャネルの開閉はミリ秒オーダーの運動性を有することから、KcsAのNMRシグナルを解析することにより機能しているチャネルを直接的に捉え、その開閉機構を明らかにすることが可能である。本年度はNMR高感度観測を可能とする、メチル選択標識法を用いてゲーティング機構の解明を行った。その結果、チャネル下部とイオン選択フィルター部位に構造的相関がみられ、イオン選択フイルターの開閉とイオン透過ポアの開閉が互いに関与している2重ゲートモデルを構築することが可能となった。
|