研究課題
我々はタンパク質問のソフトなインタラクションについて知見を深めるため、TRAP(トリプトファンRNA結合タンパク質)を用いて研究を行っている。TRAPは熱安定性の非常に高いリング型11量体を形成する。TRAPモノマーをコードするDNAを2つ、3つ、または4つをタンデムに結合させて発現させることにより、複数のドメイン構造を持っ新しいTRAP構造体を作成することに成功した。新しく出来たTRAPはリング型12量体を形成しており、サブユニット間の水素結合パターンは11量体と12量体とで大きな差はない。12量体TRAPはペプチドリンカーにより立体構造的に無理な力がかかっているため、熱安定性が悪い。TRAPタンパク質が、11量体を形成してTRAP一分子を余らせるよりも、少々無理をしてでも12量体になったことは、タンパク質・タンパク質の間のエントロピー調節がいかに重要かを示している。現在、TRAPのトリプトファン結合の協同性について11量体、12量体TRAPでいかに違うかについて解析している。また、我々は薬剤結合型ヒトヘモグロビンの立体構造解析に成功した。L35と呼ばれる薬剤はヒトヘモグロビンの酸素親和性を下げる。長い間、L35はヘモグロビンのR状態とT状態の間の平衡状態をシフトさせることによって酸素親和性を下げると考えられてきたが、今回の我々のX線結晶構造解析により、L35はヘモグロビンのT状態構造にもR状態構造にも結合することがわかった。L35分子の結合部位がヘモグロビンの酸素結合部位と離れているにも関わらず、酸素親和性が下がることがわかったのである。これはタンパク質自体の動きによって情報が伝わっていると考えざるを得ない。
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