研究概要 |
我々はタンパク質間のソフトなインタラクションについて知見を深めるため,TRAP(トリプトファンRNA結合タンパク質)を用いて研究を行っている。TRAPは熱安定性の非常に高いリング型11量体を形成する。TRAPモノマーをコードするDNAを2つ,3つ,または4つをタンデムに結合させて発現させることにより,複数のドメイン構造を持つ新しいTRAP構造体を作成することに成功した。新しく出来たTRAPはリング型12量体を形成しており,サブユニット間の水素結合パターンは11量体と12量体とで大きな差はない。12量体TRAPはペプチドリンカーにより立体構造的に無理な力がかかっているため,熱安定性が悪い。TRAPタンパク質が,11量体を形成してTRAP一分子を余らせるよりも,少々無理をしてでも12量体になったことは,タンパク質・タンパク質の間のエントロピー調節がいかに重要かを示している。最新の成果を以下に何点か挙げる。 (1)TRAPのトリプトファン結合の協同性について解析したところ,協同性に重要なアミノ酸残基を特定することに成功した。 (2)TRAPのリング状構造の中央に金のナノドットを結合させることに成功した。 (3)TRAPサブユニット同士を結合するリンカーの長さを調節することにより,TRAP複合体の安定性を飛躍的に向上させることに成功した。
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